4月の終わりから5月にかけては、自然界の命があふれだす特別な季節。
できるだけ乾燥させて、ぎゅっと小さく押し込められていた葉の細胞に
大地から吸い上げられた水がすみずみまで行きわたる。
その葉はとても狭いところにいる必要があったために、
開きはじめは薄く繊細で柔らかく・・・
だから新緑は特別な透明感があるのだ。
とくに多雪地の春は、厚くふとんのように覆われた雪が融けるとともに
いっぺんに季節が進むので
待ちにまった植物たちの大きな息吹きを感じる。
春の1日、小谷の山あいを散策した。
スタートは、姫川温泉〜雨飾荘から。はじまったばかりの芽吹きと、融けていく雪、あらわれてくる黒い土のコントラスト。
これがまさに多雪地の植生に大きな影響を与えている、豪雪。
下層の樹木たちは「しなる」ことが運命付けられる。雪解けともに、今度はしなやかに立ち上がる。
そこから、いっきに標高400m付近へ降っていくと
一転、草木の芽吹きと花たちが華やかに彩る里山へ。
ここからは、Spring is blossoming!の花たちをご紹介。
チドリノキ。冬芽を包む赤みを帯びた芽鱗がまだ残っていて、アクセントに。
一度には視界に入らないほど、斜面のずーっと上までつづくいちめんのニリンソウ!
キバナイカリソウがあるかしらと思っていたら、出会ったのはイカリソウ。
どこにでもいる見慣れたヘビイチゴも、開きたて、咲きたてはまぶしいなぁ。
ツマキチョウ。羽裏のもように感嘆!風が強くてミヤマハタザオにしがみついている。
すくっと立つバレリーナのような美人さんは、春植物のキクザキイチゲ。
モミジイチゴ。荒地にたくましく育ち、みずみずしい液果をつける
Rubus属(キイチゴ属)はなんとなく元気な子どもたちのイメージ。
カスミザクラ。まさに山を彩る霞のように、ほんのり薄いピンクの花をこぼれるように咲かせている。
久しぶりに出会えたね、ナガハシスミレ。長すぎる細い距がとても不思議で惹かれるスミレ。
カスミザクラやオオヤマザクラと比べると、楚々とした控えめな佇まいが魅力。
あたりは急斜面地でケヤキ林が多い。日当たりのよいところで、ケヤキが花盛り。
歩いても出会う人はほとんどいない、
自然の世界に身を置くぜいたくな時間。
これこそが、いつも冬の間に夢見ている雪解けの春。
いつまでも歩いていたいような、あっというまの1日でした。
緑の濃い季節に、またきっと訪れよう。