八ヶ岳山麓の植物さんぽ

By siki, 2020年7月10日

植物仲間の友人と、年に一度の植物合宿のレポートを。

ほんとうは大河原峠からひとまわりする北八ヶ岳周辺を計画していたのだけど、集まってみたもののあまりの風の強さと、尾根付近はほとんど雲の中ということもあって断念。

ほんとうはキャンプも計画していたのだけど、雨でこれも断念。急遽、温泉宿に泊まることにしたのだ。その時点で、「植物が目的ではなくなっているかもねw」ということになり…

こうなったら、どこでもいいじゃない、行きあたりばったりでいってみよう!

 

まずは立科町の御泉水自然園へ。

高山植物園のようなところはいくつか開花植物があったけれど、網で覆われている。ニホンジカから保護するためだ。

しかし湿地にはさすがにあまり来ないようだ。湿った、苔むしたコメツガ、シラビソの森はまさに八ヶ岳らしい景観。

 

 

サルオガセが看板のうらにたくさん住みついている。霧の深いところでみられる地衣類。

 

 

 

 

 

これは歩道にびっしり広がっていたシロバナノヘビイチゴ。このごろはモリイチゴという名前が使われることが多くなったとのこと。

赤いイチゴはイチゴの味(食べてないけれど)。

 

 

 

女神湖の周りの湿地も歩いてみる。

女神湖はその昔、高層湿原だったそう…その名残が少しだけあった。遊歩道からは行くことができない浮島が見えて、そこにはサギスゲが揺れていた。人が入れなくてよかったかもしれないね。

でも高層湿原がもし残っていたら、ここは霧ヶ峰にも劣らない花の湿原となっていただろうな。今なら、ノハナショウブが咲いているはず。そんな失われてしまった風景を少し想像してみる。

 

さて、ここからどこに行こう?

八ヶ岳山麓の山間の林道でも歩いてみようか? 今日のような日でなければ絶対に行かないところだから。

宿泊予定の温泉宿の周りのグーグルマップの航空写真から、候補地を考える。

「このあたりの森はどうかな?」「ここの田んぼは古いかも」

林道に適当に車を止めて、適当に気になるところに入って行く。道は獣道(ダニに気をつけよう)。

そこはやはり土壌が湿ったハンノキやハルニレの湿地林が広がっていた。雨はほぼやんで、光が森に差してくる。

 

 

マタタビが白く美しい季節。

その下にはとてもかわいらしくて香りのよい花が咲いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町の天然記念物になっているコナラの群落を通りかかる。

たしかに、たまにコナラの大木は見かける。しかし、面積はそう広くないけれど、薪炭林ではないコナラの森というのを私は初めてみたかもしれない。コナラの胸高直径は50cm以上、樹高も25mはある。

ミズナラとはまた違う独特の雰囲気がある。ああ、もしかして、太古にはこんなコナラの森がもっと山の裾野には広がっていたのかもしれないね・・・

ブナ林が温帯の極相林と言われているけれど、ほんとうにそうなのかな。

どうして安曇野の北アルプスには人の手があまり入っていなさそうなところにも株立ちしていないミズナラが優占しているのだろう。人為的な影響があるとしても、ブナがほとんどみられないのは不自然ではないだろうか?

彼女と2人であーだこーだ、話題は尽きない。

 

古い古いコナラの幹にはミヤマノキシノブがびっしりと着生している。

 

これは翌日訪れた森。

「癒しの森」として遊歩道が整備されている。雨と霧でしっとりと濡れたアカマツの森。

クマが出そうなので、クマ鈴は必須!

このくらいの小径は、里山トレッキングにちょうどいい。展望台やベンチもあって。

 

 

 

こちらはカバノキ科のヤエガワカンバ。

たしかに、たしかに

『八重皮』である。見事。

 

 

 

 

 

 

 

そしてこちらは、伐採跡地で偶然出会ったシキンカラマツ。

どの個体も沢筋に自生していて、湿った沢沿いが好きなんだなとわかる。

 

おそらくこの美しさのために盗掘でも数を減らしてきたであろう植物。

こういう植物がひっそりと自生している姿をみると、お庭の花では感じることのできない、自然の計り知れない豊かさを感じる。

花は野にあってこそ、だと。

 

植物の素敵な出会いも学びも、温泉も食事も、そしてお互いの苦労話ももりだくさんの1日半。

あまりにも楽しく学びが多かったので、忙しくてもまたぜひ行こう!と約束して別れた。彼女となら、雨でも傘がさせるなら場所はどこでもいい、ということが改めてわかったから。

たぶん私は、この植物さんぽのよろこびと幸せをまた誰かにおすそ分けしていくだろう。