
ドイツを訪れたらクラインガルテンがみてみたいと、メイに伝えると、「調べてみたけど、けっこうルールが厳しくて、ふだんは部外者は入れないかもしれない。オープンガーデンをしょっちゅうやっているみたいだから、その時にいってみよう。」という話になった。
クラインガルテンというのは、ドイツ全土に広がっている市民農園のこと。歴史をさかのぼると200年以上にもなり、工場での労働や戦争など非常に厳しい状況のなかで人々の飢えや貧困を手助けするための、本当に切実な存在として広がったようだ。
実際にドイツを移動していると、四角く区切られた小さな庭がたくさん集まった、なんともかわいらしいクラインガルテンの景色をたびたびみかけた。Googleマップで上からみると、全体の面積はけっこう広くて驚く。ただし塀で囲んであり、残念ながら近くからはよくみえない。なかはどうなっているんだろう、という思いがふくらんでいた。
Googleマップでみると、ドイツのあちこちにこんなクラインガルテンが広がっている
その日はオープンガーデンではなかったけれど、まぁいくだけいってみよう、ということになった。メイのアパートからトラムで15分くらい、停留所を降りると目の前はもうクラインガルテン。
道の入口には簡単なゲートがある。外からようすをみながら歩いていくと、ゲートが開いているところがあった。「はいってみようか。注意されたら謝って出ればいいんだから。」
小径をはいると、まっすぐ伸びた径の右と左に小さなお庭が先のほうまで広がっている。
1区画の幅は15mほどで、どの区画にも奥の方に小屋がみえる。小屋はちょっとした滞在ができるようになっているらしい。ふぅん、お庭にはリンゴの木が必ずあるんだな。お野菜よりも花と果樹が多いんじゃないかしら。どの庭も整えられすぎていないところが、かえって好ましいかんじ。
興味津々で観察しながらしばらく進むと、あるお庭でひとりのおばあちゃんが作業をしていた。
すかざす「Hallo」と挨拶をして、ドイツ人のAmadに私たちが日本からきていてクラインガルテンを見学していることを伝えてもらう。
すると彼女は、プルーンを収穫しているんだけどもっていかない?とすすめてくれた。
ありがとう!いただきます、とこたえると、じゃあなかに入って好きなだけどうぞ、ということになった。
よくみると、プルーンがたわわに実った大小の枝がいくつも地面に落ちている。前日の強風で枝が折れてしまったのだそうだ。
私たち一行はよろこんでお邪魔して、みんなでせっせと落ちた枝のプルーンを摘みはじめた。
すると途中でカズミさんが「もって帰るぶんだけじゃなくて、ぜんぶ摘んであげようよ!みんなでやれば早いし!」と提案した。
おお、それはいい考え❗️
きっとAmadはおせっかいなおばさんたちにびっくりしていたにちがいない。総勢5人で枝のプルーンをもぎとって、どんどんバケツにいれていく。
農園の彼女はこの町で生まれ育ち、ここを借りて30年になるという。東ドイツ時代は苦労もしたけれど、今よりも時間はゆっくり流れていた、と。
そんなお話を聞いているうちに収穫が終わった。短い滞在だったけれど、きっと私たちみんながこの不思議な時間を楽しんでいた。彼女は日本人に初めて会ったとのことである。
お礼を伝えて帰ろうとすると、なんと、あげる人もいないから摘んだぶんをぜんぶもっていって、という。バケツ2杯ぶんもの山もりプルーン!だが、その数倍ものプルーンが背後の木の枝に実っているのをみると、これは遠慮なくいただいてもいいかもしれない、と全員が思ったにちがいない。
そうして私たちはプルーンであふれそうになったふくろをいくつも抱えて帰路についたのだった。