Yosemite③ 主な樹木たち

By siki, 2019年11月8日

ヨセミテ-バレーの土壌は花崗岩の岩か、それが崩壊した砂礫が多い。

広葉樹の森があれば土壌もみられるけれど、谷の両側からから花崗岩の岩は落ちてくるし、マーセド川からもどんどん花崗岩由来の石や砂が運ばれて時に洪水を起こしているので、全体的に砂礫地が多く、必然的に乾燥に強い樹木で形成された樹林が多い。

そんな厳しい環境にあることもあって、樹木の種類は日本と比べたら圧倒的に少ない!

森の主役の木々たちを紹介しよう。

 

針葉樹は、ポンデローサ-パイン、ダグラス-ファー、インセンス-シダーという3種類が圧倒的に多い。

 

最初に驚くのはこの針葉樹のの高さ!!

何度か、目測で測ってみてもゆうに樹高50〜60mある。

 

私が日本でこの樹木は高いなあ、と眺めているのは樹高30mくらい。え、この半分ってことなの・・・

 

 

 

 

 

◼️ポンデローサ-パイン(Pinus ponderosa)

 

針葉樹のなかでも一番多いのはポンデローサ-パインと思えた。

北米西部に広く分布し、材としてもよく使われているマツ。

 

 

 

 

 

 

 

葉は3葉で、20cmほどの長さがある。

 

 

幹はアカマツと似ている。

この樹木で直径70cmくらい。

 

 

 

 

 

 

松ぼっくりもひとまわり大きく、長さはおよそ10cmくらいで、しっかりした棘を持つ。

リスが食べたエビフライも。



◼️ダグラス-ファー(Psedostuga menziesii)

ダグラス-ファーはよく聞く名前で、これがいわゆる「ベイマツ」と呼ばれる樹木のひとつ。日本に大量に輸入されており、ホームセンターで板が売られている。

 

カナダ・アメリカの太平洋沿岸に生育する樹木で、マツ属(Pinus)ではなくて、トガサワラ属(Psedostuga)。

日本にはこの属の植物はトガサワラしかなく、これも高知県の岩場などに自生している希少種とのこと。

 

 

たしかに葉のつき方はモミ属でも、ツガ属でも、トウヒ属とも違う。


 

この樹木の直径は1.5m以上はあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松ぼっくり。

 

◼️インセンス-シダー(Calocedrus decurrens)

いわゆる「シダー」と呼ばれる樹木のひとつ。(日本ではカリフォルニア香杉という名前がつけられているようだ)

最初にヨセミテに降りた時にした森の香りはたぶん、このインセンス-シダー。

 

このインセンス-シダーは河原のほうにはあまりなくて、もう少し岩の方に近い土壌に多かった。

Calocedrus属は日本にはないらしい。ヒノキ属とは違うのだけど、葉も香りもとてもヒノキ属に近い気がした。

アメリカ西部に分布。耐乾燥性と耐火性が強い。肌目が均一なので鉛筆に使われることが多いのだとか。

 

 

ヒノキ属じゃないなんて・・・・

 

 

 

 

 

 

 

実もネズコによく似ているのに!

 

この3種が高木層のほとんどを占めるヨセミテの樹林は、私の知っている森でいえば・・・木曽谷の森林と重なる。

高木層を占める樹木がほぼ針葉樹であること、岩石が多く乾燥しやすい地質の影響があり、下層の広葉樹の種類が限られていること、川沿いに成立していること。(木曽の森林は人工的にヒノキ科の樹種を多く残してあるのだけれど。)

ただし、その川沿い、というスケール感がまったく異なる、というおもしろさ。木曽は渓谷であるのに対し、こちらは幅1.5km以上のU字谷で、川ゆったりと流れている。

 

さて、これからは広葉樹を。

 

◼️カリフォルニア-ブラック-オーク(Quercus velutina)

日本でもおなじみのコナラ属(Quercus)、ナラの仲間。

乾燥に強いとのこと。ヨセミテバレーではこのブラックオークが最も多かった。針葉樹の間からたくましく枝を伸ばし、高いものは樹高30m以上もある。

 

こちらのオークも種類がいくつかあるが、他の種類もわりとこんなふうに鋸歯が深裂している。

よく、欧米のイラストにこんなかたちの葉っぱと、帽子の大きなどんぐりとリス、というモチーフで描かれているのを見かけるが、なるほど、そのもののデザインだし、どれも身近な生きものなんだな。



◼️パシフィック-ドッグウッド(Cornus nuttalii)

太平洋ハナミズキ、といったところ。

花のようすも、実のつき方も、紅葉の色も、ああ、ミズキ属(Cornus)だねえ、ヤマボウシの仲間だねえ、とうれしくなる。

 

これもたくさん自生しているので、花の時期はそこここに白い大きな花(白いのは萼だけど)が見られて、訪れる人を楽しませ、愛されているのだろうと想像できる。

北米西部に分布。果実は鳥や小さな哺乳類が食べると書いてある。なぜ英名でdog(犬)という単語が付いているかはよくわからないようだ。

 

◼️カリフォルニア-ローレル(Umbellularia california)

これは実をみたとたんに、アブラチャンに似てる!・・・クスノキ科だとわかって、枝の香りをかぐと、アブラチャンよりももっと柑橘系のよい香り。

調べてみると、地中海沿岸に生育するローレル(月桂樹)とも属が違うようだ。ローレルよりも葉は柔らかいいかんじ。花や実は似ている。

図鑑にはベイリーフのほうの仲間だと書いてある。ネイティブアメリカンは薬草として頭痛薬などに利用。果実はカリフォルニア-ベイ-ナッツと呼ばれ、果肉やオイリーな実は食べられるそうだ。アブラチャンを香辛料に使うような感覚だろうか。

日本にあるのは多くがLindera属で、このUmbellularia属はない。常緑だし、樹高はけっこう大きな木もあり、20m以上にもなるようだ。やはり長野よりもここは暖かいんだな、と実感。


 

植物探訪・・・これはなんの仲間?

現地ではそれがわかるだけでじゅうぶん楽しい。

日本に帰って、写真を整理しながら調べてみると、また新しい世界が広がってくる。