菅平牧場のその奥に、ダボス牧場があります。
伊藤さんと斉藤さんという2組のご家族が経営しておられるダボス牧場。この6月に、この牧場の大ファン!という地元の友人に紹介してもらって見学が実現し、伊藤さんにダボス牧場を案内していただきました。
標高は低いところで1600m,敷地はなんと380ha、このうちおよそ2/3が森林です。
ここでなんといってもユニークなのは、今ではほとんど飼う人のいない日本短角牛という種類の牛を50頭飼育されていること。そしてさらに、この日本短角牛というのは、森林の中で放牧できること!なんとササを食べるのだそうです。
しかし近年は放牧する牛の数が減ったので、今は広い草原だけに放しているとのことでした。放牧されているのは、メスの繁殖牛だけ。丈夫な体に鍛えられることでしょう。
6月の牧場はレンゲツツジが咲き、シラカバの樹林がところどころに。
レンゲツツジは全草有毒ですから、牛は全く食べません。美ヶ原とか牧場がレンゲツツジの名所になるのはそういう理由もあります。
牧草地のなかでも、牧草が生えず、どうしてもシバの草地になってしまうというところを見せていただきました。風が強いなど環境の厳しいところ。
お隣同士のレンゲツツジも、こんなに色合いが違うのですね。
次は畜舎です。
中には、牛(肥育牛)、豚、羊(サフォーク種)、そして野生のイノシシまで住んでます。
豚は中ヨークシャー種という種類の豚たちです。実はこの種類の豚は、素人にもわかるくらいとびきりおいしいのだそうです。でも成長が遅く、あまり大きくないので(=とれる肉が少ない)ため、これもほとんど飼う人がいないのだそうです。
この少しつぶれたような鼻の豚ってどこかで見たことあるなあ…
ああ、そうだ、ビーターラビットのお話に出てくるピグリン・ブランドです。ちなみに隣の女の子も、イギリス出身のバークシャー種のようです(笑)。
伊藤さんたちは、餌に対しても非常に配慮されています。
大豆やおから、ぶどうの皮、雑穀など、食品廃棄物などをなるべく活用して、研究を重ねて配合された発酵飼料。発酵る香りはほんとうにおいしそうなほんのり甘いかんじです。
これは須坂市でやはりなるべく農薬を使わずにブドウづくり、ワインづくりをがんばっている『くすのきわいなりー』からやってきたブドウの皮。
早く太らせるために、飼料は、一般的にはほとんどの場合が外国産のトウモロコシなのだそうです。
今の日本の牧畜業の危機や家畜たちの餌や肉の加工品の危うさを改めて知りました。スーパーに並んでいるパックだけでは決して決して見えてこないことです。
でもここではきちんと、安心して食べられるおいしい牛がちゃんと育てられているのです。ですが、今やおそらく絶滅危惧に近いと思われます…
牧場の後は、伊藤さんちにお邪魔してさらにお話を伺いました。伊藤さんの牛は、軽井沢のブレストンコートの料理長、浜田シェフが大絶賛ということで、知る人ぞ知る牛なのですって。
これは浜田シェフが、フランス人のシェフ向けに書いたフランス語の料理の本(!)。
このひと皿は『菅平ダボス牧場の短角牛 炭火焼』というなまえがつけてあります。
美しい…アートです。
これはなんとコシアブラのひと品ですよ…!
話題は尽きなかったのですが、とにかく最優先でコスパを選んでいる社会の中で、安心できる飼料で、時間がかかってもご自分が納得できる畜産を追求している伊藤さん、すごい迫力でした。